秋田県仙北市の乳頭温泉郷へ2泊3日で行ってきました。宿泊したのは「休暇村乳頭温泉郷」。休暇村以外の妙乃湯・大釜温泉・黒湯温泉・蟹場温泉は、宿泊者専用の「湯めぐり帖」を使って巡りました。私は温泉を選ぶとき、景色や雰囲気だけでなく泉質も大切にしています。
乳頭温泉郷は、施設ごとに源泉が異なります。単純泉、単純硫黄泉、硫酸塩泉、炭酸水素塩泉などを一度の旅で入り比べられるのが大きな魅力です。香りや湯の色だけで判断せず、公式の泉質表示も見ながら巡ると、それぞれの違いがより分かりやすくなります。
今回もっとも心に残ったのは黒湯温泉でした。山深い場所にあり、源泉の息づかいがすぐそばに感じられる環境は、温泉好きにはたまりません。
2泊3日の拠点は休暇村乳頭温泉郷
今回宿泊した休暇村乳頭温泉郷は、設備がしっかり整っており、館内の清潔感は抜群でした。客室も広く、湯めぐりで疲れた体をゆっくり休められる快適さがあります。ほかの温泉宿と比べると、昔ながらの旅館というよりホテルに近い印象ですが、その分、設備面や衛生面で安心して過ごせました。朝・夜のビュッフェには地元の食材を使った郷土料理がふんだんに並び、温泉だけでなく食事でも秋田を味わえます。心も体も、秋田を満喫できる滞在になりました。
休暇村の公式サイトでは、内湯「乳頭の湯」はナトリウム炭酸水素塩泉、内湯と露天風呂の「田沢湖高原の湯」は単純硫黄泉と案内されています。同じ宿の中で性質の異なる2つの源泉を入り比べられるのは、泉質を重視する私にはうれしいポイントでした。ブナ林に囲まれた露天風呂では、硫黄泉と自然の景色を一緒に楽しめます。

湯めぐり帖で巡った4つの温泉
妙乃湯|「金の湯」と「銀の湯」を楽しめる
妙乃湯は昭和27年(1952年)開業。公式サイトによると、樺太から秋田へ戻った創業者夫妻が、山道を歩く中で森から湧く温泉を見つけ、簡素な建物を造ったことが始まりです。当時は車道がなく、町から徒歩で半日かかる場所でした。その後、県道と路線バスが開通し、現在の宿へと受け継がれています。渓流沿いの落ち着いた空間と大正ロマンを感じさせる意匠には、山の湯宿として始まった歴史と、訪れる人を心地よく迎える工夫の両方が感じられます。
2つの自然湧出温泉は8つの湯船へ源泉かけ流しで注がれています。刺激の穏やかな単純泉と、酸性でさっぱりした肌ざわりと案内される硫酸塩泉を、自分の体調に合わせて行き来できるのが魅力です。強い温泉が苦手な方は、まず銀の湯から試すと安心だと思います。

大釜温泉|木造校舎の面影と力強い酸性泉
大釜温泉は、木造校舎を移築した建物が印象的です。飾りすぎない外観に、山の温泉宿らしい懐かしさがあります。
公式サイトに記載された泉質は、酸性含ヒ素ナトリウム塩化物硫酸塩泉です。源泉は約98℃と非常に高温で、源泉かけ流しを基本としながら、入浴できる温度に整えるため加水されています。熱めとぬるめの湯船が用意されているので、酸性泉の力強さを感じつつも、体調に合わせて無理なく入れるほうを選べます。

黒湯温泉|今回いちばん心に残った“秘境の湯”
乳頭温泉郷の奥に位置する黒湯温泉は、到着した瞬間から秘湯らしさが濃くなります。昔ながらの湯治場を思わせる建物が並び、敷地内には湯けむりが立つ源泉地があります。
黒湯温泉の公式な泉質表示は単純硫黄温泉です。敷地内の河原に源泉が湧き、乳頭温泉郷でも特に湯量が豊富と案内されています。硫黄泉そのものに加え、湯けむりの立つ源泉地を間近に感じられる環境が、今回もっとも強く印象に残りました。
個人的には、源泉がぐつぐつと湧く様子と、長い歴史を感じさせる昔ながらの造りが印象的な黒湯温泉が、今回巡った4湯の中で最も心に残りました。山奥に入り込んだような立地と、源泉がすぐそばにある空気感。温泉を単なる入浴設備ではなく、その土地から湧くものとして味わいたい方には、特におすすめしたい一湯です。

蟹場温泉|森の中の離れ露天とやさしい湯
蟹場温泉は、2つの内風呂と露天風呂で異なる源泉を使用しています。公式サイトでは、木風呂・岩風呂・女性専用露天風呂の「蟹場硫黄」と、唐子の湯の「唐子」は、いずれも単純硫黄泉。湧出口温度はそれぞれ54℃と55℃で、どちらも源泉かけ流しです。
なかでも印象的なのが、宿から森の中を約50メートル進んだ先にある露天風呂「唐子の湯」。自然との距離が近く、湯船に浸かりながら山の静けさを味わえます。唐子の湯は混浴のため、利用条件や時間帯が気になる方は事前に公式案内を確認しておくと安心です。

今回は行けなかった2つの温泉|どちらも超一級
今回の2泊3日では、乳頭温泉郷の七湯すべてを回ることはできませんでした。残ったのは鶴の湯温泉と孫六温泉です。ただ、どちらも「時間が余れば寄る」という位置づけではなく、それぞれの歴史と源泉を目当てに訪れたい超一級の温泉です。
鶴の湯温泉|江戸時代から続く乳頭温泉郷最古の湯宿
鶴の湯温泉は、乳頭温泉郷の中で最も古い歴史を持つ温泉宿です。公式サイトによると、1638年には二代目秋田藩主・佐竹義隆公が、1661年には亀田藩の岩城玄蕃公が湯治に訪れたと伝えられ、一般客向けの湯宿としての記録も元禄時代から残っています。藩主の警護を担った人々が詰めたという茅葺き屋根の「本陣」も、長い歴史を今に伝える存在です。
半径約50メートル以内に、泉質の異なる4つの源泉が湧いているのも大きな特徴です。白湯は含硫黄ナトリウム・カルシウム塩化物・炭酸水素泉、滝の湯は含硫黄ナトリウム塩化物・炭酸水素泉、黒湯はナトリウム塩化物・炭酸水素泉、中の湯は含重曹・食塩硫化水素泉。見た目が似ていても、肌ざわりや泉質の違いを一か所で入り比べられます。今回は入れなかったため、次回は時間に余裕を持って訪れたい温泉です。

孫六温泉 六庵|明治から受け継がれる山の湯と現代の心地よさ
孫六温泉は明治35年開湯。乳頭温泉郷の中でも奥深いブナ林に囲まれ、昔から「山の薬湯」として親しまれてきた温泉です。現在は「孫六温泉 六庵」として、受け継がれてきた湯守りの文化に、落ち着いた客室やバレルサウナなど現代的な快適さを組み合わせています。
公式サイトでは、混浴露天風呂と男女別内湯「唐子の湯」は単純硫黄泉、混浴内湯「石の湯」は単純温泉と案内されています。いずれも源泉かけ流しで、自然の景色を楽しむ露天風呂と、静かに湯と向き合える内湯の両方が用意されています。駐車場から宿までは徒歩区間があり、通年利用できるP3からは約15分です。歩きやすい靴を用意し、移動時間にも余裕を持って向かうと安心です。

2泊3日だからこそ、急がずに楽しめた
温泉郷に来ると「できるだけ多く入りたい」と考えがちです。ただ、泉質の異なる湯を続けて巡ると、思った以上に体力を使います。
2泊3日なら、入浴の合間に休憩を取りやすく、天候や体調に合わせて予定を調整できます。せっかくの温泉旅ですから、全部を詰め込むよりも「今日はここまで」と余白を残すほうが、帰宅後まで気持ちよく過ごせると思います。
湯めぐり前に知っておきたいこと
- 湯めぐり帖は宿泊者限定で、料金は2,500円・現金払いです。
- 有効期間は1年間。乳頭温泉郷7軒の湯を各1回利用でき、期間中は湯めぐり号にも乗車できます。
- 日帰り入浴の受付時間や休館日は施設ごとに異なり、変更されることもあります。出発前に各施設の公式サイトをご確認ください。
- 黒湯温泉は冬季休業があります。例年、晩秋から春先は道路や交通手段にも影響が出るため、特に冬は事前確認が欠かせません。
- 入浴前後は水分を取り、湯あたりを感じたら無理をせず休みましょう。
※上記は2026年9月24日時点の公式情報を確認して記載しています。料金・営業期間・交通情報は変更される場合があります。
まとめ|それぞれを巡って、お気に入りの温泉を見つけよう
休暇村ではナトリウム炭酸水素塩泉と単純硫黄泉、妙乃湯では単純泉とマグネシウム・カルシウム硫酸塩泉、大釜温泉では酸性含ヒ素ナトリウム塩化物硫酸塩泉を楽しめました。黒湯温泉と蟹場温泉はいずれも単純硫黄泉ですが、源泉の場所や浴場の環境が異なり、同じ泉質名でも印象の違う湯めぐりになりました。
今回体験した休暇村と4つの湯、そして次回に残した鶴の湯と孫六温泉。乳頭温泉郷の七湯は、同じ温泉郷にありながら泉質も雰囲気もそれぞれ異なり、どれも超一級です。歴史、秘境感、建物の風情、湯のやさしさ、設備の安心感など、温泉に求めるものは人それぞれ。どこか一つを正解にするのではなく、ぜひそれぞれの温泉を巡って、お気に入りの温泉を探してみてください。
次に乳頭温泉郷を訪れるなら、大正ロマンを感じさせる造りの妙乃湯か、歴史と自然を全身で感じられる黒湯温泉のどちらかに泊まってみたいと思っています。そして、今回入浴できなかった鶴の湯にもぜひ再訪し、今度こそ湯に浸かりたいです。初めての乳頭温泉郷で設備や清潔感を重視する方には休暇村が心強い拠点になりますし、次の旅では好みの風情や泉質に合わせて宿を変える楽しみもあります。
参考にした公式情報
本文中の各温泉画像は、施設の特徴を紹介・比較するため、各施設の公式サイト掲載画像を必要な範囲で引用しています。各画像をクリックすると出典ページへ移動します(2026年9月24日閲覧)。


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